培養による腟トリコモナス原虫の形態学的研究
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概要
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腟トリコモナス原虫 (trichomonas vaginalis) は〓々腟内に寄生し, 各種の抗生剤によっても根治し難い原虫である. 虫体の構造は単細胞原生動物で, 未だその細胞形態学上に於でも多くの疑問が残されている. 著者は二村・上野改良液体培地並びに真柄Vfブイヨン嫌気性培地の成績を比較し, 位相差顕微鏡及び電子顕微鏡的に腟トリコモナス原虫の微細構造を観察した. 上述せる両液体培地による虫体の形態並びに発育曲線の差は認められず, 共存細菌の発育を来たすことなく継代4代以後には純培養を得て, 良好な発育を示した. 位相差による原虫の形態は通常は西洋梨子形或いは紡錘形を呈する虫体が多く, 細胞質中には光線を強く曲折する小球が多数存在する. 又細胞形質よりも明るく見える液胞と思われるものも見られる. 核は無構造で, 核膜は不明瞭である. 前鞭毛は通常4本で, 波動膜は波状で鞭毛と一緒に形状は常に変化している. 後軸突起は1本で伸縮自在で粘着性のあることが観察された. 電子顕微鏡では虫体は一層の細胞膜に包まれ, 細胞質は一般に瀰漫性に微細顆粒に富む. 核は類円形或いは楕円形で核膜は核膜孔を持った2層のmembraneよりなり実質は微細顆粒状網様である. 虫体前端の前鞭毛は4本よりなり, その縦断像では電子密度の高い中心軸と側軸が見られ細胞膜の延長よりなる膜に包まれている. 波動膜は2枚の膜の重なりとして見られ, 細胞膜の延長と思われる. その基底部で明るい薄い方の膜に接して毎常1個の鞭毛横断像が見られるが, これは基条と思われる. 伴基条は, 鞭毛の側軸に接して発し, 虫体の縦軸に沿って走り, 規則正しい条紋構造を示す. 軸索は鞭毛の起始部をとり巻き, 核の反対側で巾を縮少し, 虫体の後方に及び切断方向により数珠状或いは規則的な間隔をもった線維の柵状配列として認め得る. 後軸突起の外側は細胞膜におゝわれ, 内部に管状構造が認められる. 所謂ミトコンドリア様顆粒はその形態からして脂肪顆粒と考える. parabasal body, cytostom及びrhizoplastを認める人もいるが, 電顕的には観察されない.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-12-01
著者
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