入子宮頚癌の超微形態学的研究
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概要
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著者は人子宮頚部の上皮内癌5例, 初期浸潤癌2例, 浸潤癌10例, 腺癌5例, 混合癌4例の超微構造を観察した. 1) 上皮内癌の未分化型のものでは, tonofilamentに乏しく, desmosome結合が少ない. 分化型のものでは, tonofilament及びdesmosome結合は多く, 細胞間隙が拡大し, 浸潤癌の比較的分化せるものに類似の構造が見られる. 従って上皮内癌でも浸潤癌の如き種々の成熟度を示すものと考えられる. 又, 化生初期の構造に見られるような暗細胞の介入が観察され, 上皮内癌と化生初期との関連性が示唆された. 2) 初期浸潤癌では細胞質小突起が間質へ向って突出している像が見られ, 浸潤癌では基底膜の欠損が見られた. 癌巣基底部のtonofilamentの充満及びribosomeの減少は癌細胞の分化方向の異常である. 未分化型のものではdesmosome結合が少なく, 癌の悪性度と関連性を有しているように思われる. 分化型のものではtonofilament多く, halfdesmosome結合もかなりに発達しており, 扁平上皮癌の特徴を有している. 一方, 組織発生過程の問題からみると, 初期癌の癌巣中にsubcylindrical carcinoma (仮称) のpatternがみられ, subcylindrical cell anaplasiaにその起源が求められ, 浸潤癌の多彩性はreserve cellに由来することが示唆される. 3) 腺癌の微細構造に於ては, 円柱上皮としての性格よりも, むしろ扁平上皮としての性格が強くみられ, 腺癌は本来の円柱上皮起源以外にreserve cell由来のものもあることが示唆された. 4) 混合癌に於ては, 化生中期にみられる腺様増殖の "中間 (移行) 型細胞" に, その起源が求められる如き種々の特徴がみられる. 又腸上皮化生型細胞の出現は癌細胞の多分化能を示す. 以上, 上皮内癌, 初期浸潤癌, subcylindrical carcinoma, 浸潤癌, 腺癌及び混合癌の微細構造上の観察からこれらの変化は, 扁平上皮及び円柱上皮, 或いは扁平円柱両上皮の中間 (移行) 型のいずれにでも分化し得るmult ipotentialityを有すreserve cell hyperplasiaが関与していることが示唆される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-12-01
著者
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