ウサギ血清transaminase遊出機転に関する2,3の考察
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概要
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種々の合成progestinをヒトおよびウサギに投与し, 血清transaminase (T) の推移を中心にその肝機能に及ぼす影響について観察した. (1) pregnane系progestin投与時ウサギにおいてもヒトにおいても血清Tの変動や肝機能の障害は認められない. (2) 17α-ethynyl-19-norsteroidは一定量以上の投与でヒト, ウサギともに血清Tの著明な上昇がみられ同時にヒトではBSP貯溜, 時に血清Bilirubinの上昇, 黄痕が認められた. (3) ウサギにおいては17α-ethynyl-estradiolおよびその3-methyl-etherはnorethindroneの1/50の量で血清Tの上昇をおこす. (4) ヒトでは常用量のmestranolは血清Tの上昇の原因とはならないが, norethindrone単独投与よりmestranol添加群に血清T上昇, 肝機能障害例の頻度が高くなる. (5) ウサギにおいてnorethindroneによる血清Tの上昇はprednisoloneの併用により抑制される. (6) ウサギにおける血清Tの上昇と肝の組織学的変化は一致せず, 著明な壊死は認められなかった. これらの所見からprogestin投与時, 血清中で上昇したT活性は肝細胞よりの遊出によると考えられるが, GPT/GOTの比は肝細胞中のものより血清中のものは著しく高い. このことに関して2, 3の検討を行なった. (1) 実験的に肝細胞膜透過性光進状態をつくるためにウサギ肝細胞浮遊液を作製し, 細胞分離前後の細胞内T活性を測定した. GOTはその大部分が分散細胞中に残存するのに対しGPTは50%以上がmedium中にろう出し, 細胞膜透過性光進時GPTはGOTに比較しはるかにろう出しやすいことが示された. (2) ウサギ血清中GPT activatorについて検索したが, progestinの投与, 非投与にかゝわらず加熱血清は粗抽出GPTを活性化せず, さらにSephadex gel filtrationによるactivator分画の分離によっても活性の低下は著明ではなく, activatorによるGPTの活性増幅はぼ否定し得た. (3) GPT, GOTの血清中における失活状態につき検討したが, 両者の間に差は認められなかった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-12-01