銅塩排卵の作用機序に関する研究
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概要
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銅塩排卵の作用機序を解明するために, 成熟雌性家兎519羽を用いて実験し, 1%硫酸銅溶液を家兎体重1kgあたり2mgより4mgを静注して排卵誘発率を測定, 2mg/kg以下は全例排卵せず, 4mg/kg以上で全例排卵し, その50%排卵有効量は3mg/kgで, 排卵家兎1羽あたりの平均排卵数は6〜7個で銅塩投与量に比例して増加する傾向は見られなかった. 銅塩の排卵誘発のための作用部位の検索に, 100μg以下の銅塩粉末を脳内および下垂体内に移植して排卵を誘発する部位を検索した. 視床下部中央隆起部周辺および下垂体茎部に移植された全例に排卵が見られ, 下垂体前葉のみに移植されたものでは排卵は認められなかった. さらに作用部位の詳細な検討のため, 50μg以下の銅塩を視床下部中央隆起部に移植すると, 中央隆起内側後部基底部に移植された全例に排卵が認められた. なお中枢内移植例の排卵卵胞数の平均は6〜7個で移植部位による相違はなかった. 銅塩の作用部位をさらに詳細検討のために0.003%より5%までの硫酸銅溶液0.005mlを中央隆起内側後部基底部へ移植して排卵に要する量を50%排卵有効量で測定すると静注の1/4000で排卵することを見出した. 中枢内注入による平均排卵数は投与された銅塩量と関係なく5〜6個でほぼ一定値を示し, HCGおよびPMS投与による排卵数はともに投与量が増加するにつれて増加する傾向を示した. 上述の結果, 銅イオンは視床下部のいわゆる「排卵中枢」に作用して排卵を誘発せしめ, 下垂体前葉以上のレベルに作用する時は排卵卵胞数はその投与量につれても増加せず, 卵巣に直接作用する時は投与量に比例して増加するという排卵の基本的法則を明らかにした.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-11-01