卵巣ホルモンと雌性ラット性行動
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概要
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卵巣より分泌される性ホルモンは雌性動物の性行動と関係があることは古くから知られているが, その作用機序に関しては未だ不明な点が多い. 従って著者はとくにestrogenおよびprogesteroneの雌性ラットの性行動誘発作用およびその作用機序について, 雄性ラットの30回の騎乗に対する雌性ラットの前弯反応の比 (交尾商) で検討した. A. 正常性周期を有する雌性ラットでは, 発情前期にのみ前弯反応を示し, 発情期, 発情後期, 発情間期には殆んど前弯反応を示さなかった. B. 去勢後estrogen単独投与によっても前弯反応を示すが, 一定量 (1.0μg/day) 以上投与することにより高率の反応を示した. C. estrogen前処置後progesteroneを投与することにより, estrogen単独投与よりはるかに高率の前弯反応を示した. D. 視床下部神経線維切断実験により, 視床下部前野より弓状核におよぶ切断時に前弯反応の著明な低下が見られた. なお神経線維切断によりみられる性周期と性的発情との間には何ら関連性が見られなかった. E. 視床下部内estrogen移植実験では, 弓状核, 腹内側核を中心とした視床下部中央隆起部中部に移植することにより高率の前弯反応が見られた. 以上のことによりestrogenは中枢性に作用し性行動を促進し, その作用部位は弓状核・腹内側核を中心とした視床下部中央隆起部周辺と思われ, 同部の刺激により性行動が誘発されると考えられる. なおprogesteroneは, estrogenによる発情誘発作用を増強していると思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-11-01