人胎盤絨毛の電子顕微鏡的並びに組織化学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
逐月的人正常胎盤並びに晩期妊娠中毒症 (以下中毒症と略) 胎盤について, 形態的変化と機能の関係を見るに適した酵素組織化学的手技を用い, 光学顕微鏡的及び電子顕微鏡的観察を行ない以下の成績を得た. 胎盤そのものの生活増殖機能と母児間物質交換機能に関与する代謝系とは異なり, 逐月的に減少する. phosphorylase, グリコーゲンは胎盤自体の生活増殖に必要なるエネルギー系と推定される. 2. Langhans細胞はphosphorylase, グリコーゲンとの関係及び細胞基質領域の広さから嫌気的代謝が活発であり, syncytium細胞はその酵素活性とmitochondriaの数から好気的代謝が活発である事を推論した. 3. 母児間物質交換機能は繊毛上皮細胞膜の形態変化並びに絨毛上皮細胞膜phosphatase活性と間質毛細証管及びその内皮細胞のpinocytosis等の増加により, 能動的, 生物学的物質輸送は妊娠中期以後活発になるものと思われる. 4. Syncytium細胞に認められるO_sO_4好性層状構造物は妊娠6週から逐月的に増加し, 中毒症胎盤絨毛syncytium細胞で著明に認められる傾向があった. 層状構造が多数存在する部位はPAS反応陽性で, 基質にはグリコーゲン顆粒を認める事がある. これはphosphorylase活性低下によるグリコーゲンの蓄積であり, 唐状構造物は細胞のある種の退行変性像と考えられる. 5. 中毒症胎盤絨毛毛細血管の基底膜下に, しばしば膜様絮状物質や電子密度の高い沈着物を認めた. 6. Glutaraldehydeで前固定した場合, ATP, 5-nucleotide, β-glycerophosphateのいずれを基質としてもmitochondriaに酵素反応を認め得ず, 絨毛上皮細胞膜における燐酸鉛の沈着は外側膜に認め, 上記基質による膜局在性の相違は認めなかった. 従って細胞膜に検出した酵素反応は非特異性アルカリphosphataseによるものであろう.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-11-01