絨毛性腫瘍診断に対する骨盤動脈撮影法の意義
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概要
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最近, 絨毛性腫瘍に対する化学療法の進歩に伴い, 所謂 primary chemotherapyが普及されつつあるが, 原発巣について組織診断を欠くため化学療法の妥当な評価をなし得ない憾みがある. 著者はこの問題解決の一方策として, 血管造影法を用いて絨腫瘍分類に何等かの手掛りを得んものと本研究を企図した. Seldinger氏法により骨盤動脈撮影を行ない, 最近2年5ヵ月間に, 絨腫瘍94例とその他の疾患等24例, 計118例に対し延163回実施した. その結果, 次の成績を得た. (1) 骨盤動脈撮影は安全, 確実, 容易なる方法であることを確認した. 重篤なる合併症は認めなかった. (2) 本法と子宮卵管造影法とを同整位にて行なう新たなる試みに成功し, この際に子宮を下方に牽引する方法並びに連続撮影法による利点を見出した. (3) 摘出子宮に対するMicroangiographyによる検討で, 骨盤動脈造影像とほゞ一致する血管像が得られた. (4) 絨腫瘍86例における血管造影像を検討分析した結果, これを三つの型に分類し得た. これをI型造影像, II型造影像, III型造影像と呼ぶ. (5) 組織診断の確定した症例のみで分析した結果, I型造影像を示した10例中9例 (90%) が絨腫であり, II型像を示した10例の中9例 (90%) が破奇, そしてIII型像を示した9例はその中7例 (77.8%) が胞奇で残り2例 (22.2%) が破奇であった. 以上の成績より, 骨盤動脈撮影の診断的意義は極めて大であることを確認した. 殊に絹織診の得られない絨腫瘍症例においては, 絨腫, 破奇, 胞奇の各病型分類に対する有力なる方法であり, 今後の絨腫瘍臨床に寄与する点火と考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-10-01
著者
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