妊娠中毒症における血清LDH (lactic dehydrogenase) isozymeに関する研究
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概要
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晩期妊娠中毒症の脂質代謝異常の発現に関して, 肝機能は極めて重要な役割を演じているとされている. 然し乍ら, 従来の臨床的肝機能検査に於ては, 代謝異常という面での本症の肝機能異常の存在を充分に評価出来る結果を得ていない. 近年新しい肝機能検査法の1つとして, 臨床酸素学的な方法が導入されつゝあるが, 臓器の変性壊死, 或は代謝上の変化を敏感に反映し, 血中に遊出する酵素の中, 血清LDHアイソザイムは, 肝疾患の際に増量する分画しDH-5を有し, 正常の血清中には極めて少量であるため, その増量が認められた場合は, 肝機能障害の一指標となしうるとされている. 著者は, 寒天電気泳動法による血清LDHアイソザイム測定を初めて妊娠中毒症の病態解析に応用し, 新しい2, 3の知見を得た. 先ず, 正常非妊婦について正常パターンを見出し, 更に正常妊婦, 妊娠中毒症について測定を行ない, これ等を比較検討した結果, それぞれのパターンに差異を認めた. 妊娠中毒症に於ては, LDH-5の分画は, 正常非妊婦, 正常妊婦に比し明らかな高値を示した. 又産褥1ヵ月の中毒症褥婦に於ても, 依然高値を示すものがあった. 以上の結果から, 妊娠中毒症の肝機能異常は, 血清LDHアイソザイム測定法によれば, 頻度の上でも正常妊婦に比し明らかに多いことが判ったが, 本症脂質代謝異常に関連し, 肝よりのLDH-5の遊出機転について若干の考察を行なった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-10-01