人胎盤の免疫学的研究, 特に抗原的性格について
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概要
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人胎盤の抗原性については古くより知られ, 又一般的に認められているが, その抗原的性格については必ずしも明らかでない. 因みに胎盤抗原は包括的な表現で, この中には胎盤のみに存在する組織特異抗原をはじめいろいろの抗原が含まれていることはいうまでもない. 今日移植及び組織特異抗原の研究は免疫学の中心的な問題であるが, 移植の研究が遺伝子との関係においても明らかにされて非常に進歩したのに比べて, 組織特異抗原の研究は癌, 自己免疫疾患, 移植それ自体などの広い研究分野と密接な関係がありながら, 十分な成果をあげていない. 本研究の目的は人胎盤に組織特異抗原が存在するかどうか, その特異抗原が胞状奇胎或いは絨毛上皮腫ではいかに変化するか, 又胞状奇胎そのものに特異的抗原が存在するかどうか, この, 3点について代表的な血清学的実験法及び分画方法を用いて検討した. 人胎盤に対する特異抗血清としては胎盤抽出液をFreund's adjuvantと混和して家兎を免疫して得た抗血清を更に正常人血漿, 肝抽出液及びAB群赤血球で吸収したものを用い, 次のような結果を得た. (1) 十分に吸収された抗人胎盤血清は寒天ゲル内沈降反応及び免疫電気泳動法により胎盤とのみ反応し, 他の血液成分或いは臓器組織, 胎盤分泌成分HCGなどとは反応しなかった. (2) 吸収抗胎盤血清は型特異抗原, Forssman抗原と反応しなかった. (3) 塩析法による抗原分画では硫酸アンモニウム33〜55%飽和分画に胎盤特異抗原の存在を検出した. (4) 澱粉ブロック電気泳動法によって胎盤特異抗原の精製を試みたが, その結果は不十分であった. (5) 細胞分画分析を行なうと, 胎盤特異抗原は胎盤及び胞状奇胎のミクロゾーム分画に存在したが, 絨毛上皮腫ではどの分画にも検出されなかった. (6) 胎盤は組織特異抗原を有し, この抗原はミクロゾーム分画に存在する. (7) 胞状奇胎のみに特異的な抗原は検出されなかった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-10-01