胎児の呼吸代謝に関する研究
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概要
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分娩時の母体並びに胎児の代謝繰境を解明するため分娩直後の母体動静脈血及び臍帯動静脈血の血液ガス, 血糖, 血清電解質の測定を行ない, 妊娠並びに分娩合併症の影響を検討するとともに, 胎盤における物質交換及び母児の代謝環境について考察した. 血液ガス値では母体は軽度の代謝性アチドージスの存在とそれに対する呼吸性代償が極めて強く現われるため全体としては呼吸性アルカロージスに傾いた状態にあるが, 正常群と異常群の間には有意差は認められなかった. 一方胎児では母体に比し著明な低酸素状態, 炭酸ガス蓄積, アチドージスが特徴的であり, これらの変化は異常群, 特に分娩時異常群に強く認められた. 更に酸塩基平衡の面からみると胎児では正常群においても呼吸性並びに代謝性アチドージスの混在する混合型アチドージスの状態にあり, この傾向は合併症の存在により増強し分娩時異常群に最も強くみられ, 合併症の重複例ではむしろ純粋な代謝性アチドージスの傾向がみられる. 更に母児間の平衡状態を母体動脈, 臍帯静脈値の相関を指標として検討したが, 酸素分圧値ではその相関性は明瞭でなく, 炭酸ガス分圧値並びにpH値に軽度の相関が認められたに過ぎない. 一方血糖値では母体に比し胎児は低血糖の傾向があるが母児間に極めて強い相関が認められた. しかし異常群ではこの相関に乱れが認められた. 血清電解質ではNa値は母児聞及びそれぞれの異常群の間にも殆んど変動がなく有意の差はみられないが, 母児間には中等度の相関が認められた. 一方K値では胎児は母体に比し高カリウム血症を示すにも拘わらず正常群では母児間に中等度の相関がみられるが, 異常群ではこの相関に乱れが認められた. 以上胎児は母体と異なる代謝環境にあり, 分娩時には極めて狭い範囲で母体との平衡を保っているようであり, またその平衡状態が酸素欠乏を主体とする急性の合併症に左右されることからみても血液ガス値ないしは血糖, 血清電解質等との関連を追求することが胎児の代謝繰境の改善に極めて重要であろう.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-01-01
著者
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