銅塩排卵における生体内銅移送機序
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概要
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銅塩による家兎排卵現象については, Fevold以来多くの研究が行なわれているが, この作用部位は視床下部であるといわれている. 今回著者はこの銅塩が血中に入った場合どのような変化をして視床下部へ運ばれるかを考え今迄に排卵と銅そのものについて生化学的な研究がなされていないので, 下記の実験をおこない興味ある結果を得たので報告する. Bathocuproine試薬を使用して血清銅の定量を行なった. 銅の存在を明確にする為に試薬の配合を変えて定性用試薬を試作し使用した. 銅塩のうち硫酸銅を使用して家兎排卵に使用される範囲で家兎休重kg当りの量を変えて静注し, 血清中の銅値の時間的変動を追究した. 排卵無効量では3時間以内に正常値にもどるが, 排卵有効量では高い値を示した. また著者が作成した牛アルブミン銅についても同様な曲線で減少している. 生澱粉電気泳動法を使って静注銅塩の血中の変化をみると, 静注された銅塩の銅はただちにアルブミンと結合してアルブミン銅となり, 排卵実験の銅量では全てアルブミンと結合して遊離の銅はほとんど存在しないことがわかった. セファデックスカラムを用いても同様な成績が得られた. 牛アルブミン銅をセファデックスG25 fineを使って作成し, 家兎排卵誘発に成功した. 半有効量は0.302g/kgで, 銅の量として換算すると906γ/kgとなり, 硫酸銅の銅量とほぼ同値になった. これらのことより, 静注された銅塩は血中のアルブミンと結合して, 今まで考えられていたように無機銅イオンとしてではなく, 血流中ではアルブミン銅として視床下部に運ばれることを実証した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-01-01