絨毛性腫瘍の臨床的研究 : 免疫学的応答を中心として
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概要
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当教室における統計から,絨腫瘍は40才以上の頻妊婦人に多いことを知つたが,高年令,頻妊は免疫と如何なる関係を有するのであろうか.この腫瘍が一種の同種移植腫瘍であることを考え合せて,免疫学的応答を中心として種々の問題点を追求してみた. 著者はimmunologically competent cellとしてのリンパ球に注目し,まず末梢血中リンパ球をPHA添加のもとに培養すると芽球様に幼若化するものが出現し,その出現率がその個体の免疫学的機能の一面を示すという方法論を利用し絨腫瘍の免疫学的背景を追求した. 1. 健常婦人群では年令が加わり,又経妊回数が増すと共にリンパ球幼若化率が低下する傾向を認めた.これは加令,経妊と共に,免疫学的機能が低下することを示唆する. 2. 子宮癌では末期になつて初めて幼若化率が低下したが,絨腫瘍群では臨床経過とは無関係に幼若化率低下の傾向を認めた.即ち絨腫瘍では,その背景は別として当初より免疫学的機能が低下していると思われる. 一方,絨腫瘍治療経過中の末梢血リンパ球数及び絨腫瘍組織へのリンパ球様細胞浸潤の動態を調べて,免疫学的応答の動きを追求し,絨腫瘍治療指針を模索する上の重要な資料とした. 3. 絨腫瘍41例中29例に,その治療過程の何処かの時点でabsolute or relative lymphocytosisを認めたが,これら症例はいずれも寛解した.lymphocytosisを全然示さなかつた12例中2例は死亡している. 4. 化学療法あるいは手術療法で著効を呈した症例では,強いlymphocytosisの出現をみた. 5. 絨腫瘍37例について,その腫瘍組織へのリンパ球様細胞の浸潤を観察したところ,寛解例ほど強い細胞浸潤を認めた. 6. 以上の所見から絨腫瘍治療には,免疫学的応答を十分に考慮すべきであると考え,考察を加えた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-10-01
著者
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