ヒト胎児における steroid sulphokinase について
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概要
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近時胎児胎盤系におけるステロイドホルモンの転化生成過程が明らかになり, この過程に関与するとみなされる胎児の硫酸抱合機構もまた重要視されるに至った. よって著者は Wengle 法に従い基質として DHA. pregnenolone, estrone を用いて胎児臓器と胎盤との steroid sulphokinase について検討した. 1. 胎児各臓器ならびに胎盤とも本酵素系は細胞内では超遠心分離 105,000×Gの上清部分の可溶性蛋白分画に存在し, 培養90分でほゞ飽和状態に達することを認めた. 2. 各胎児臓器における steroid sulphokinase については a DHA sulphokinase 活性は副腎で最も高く, 肝, 卵巣, 空腸, 精巣, 腎, 脾臓, 胸腺, 脳の順である. b pregnenolone sulphokinase 活性も副腎で最も高いが続いて卵巣, 空腸, 肝, 胸腺, 脾, 腎, 精巣, 脳の順序となり, c estrone sulphokinase 活性も副腎で最も高いが, その他のものでは空腸, 肝, 卵巣, 腎, 脾臓, 精巣, 胸腺, 脳の順序となること. したがってこれらの胎児諸臓器のなかでは特に副腎のそれが著しく高いので, 活性の亢進が推定されるが, 胎盤のそれが著しく弱いことを認めた. したがって, 胎児の各臓器組織で副腎, 肝, 空腸, 性腺には steroid sulphokinase 活性が強く, これにより胎児胎盤系の steroid genesis が積極的に営なまれでいるであろうとする根拠が得られたものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-07-01