胎児および新生児血清中 α_1-Fetoprotein について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ヒト胎児血清中にのみ存在する蛋白質, α_1-Fetoprotein の胎児期および新生児期の値を検討し, あわせて血清総蛋白量, 蛋白分画, α_2-Macroglobulin 値との関連性を考案, さらにα_1-Fetoprotein の産生部位を追求した. 1. α_1-Fetoprotein は母体血清には妊娠全期にわたって認められず, 胎児血清では胎生初期から存在し, 在胎月数および体重増加の経過に従い減少した. 2. α_1-Fetoprotein は胎児発育とともに増加する血清総蛋白量, γ-Globulin および成長促進作用があるといわれる α_2-Macroglobulin 等とは逆の相関性を示した. 3. 新生児期の α_1-Fetoprotein 値は, 正常児群では分娩直後から急激に減少消失する. 満期産低体重児群ではその値は高く, 持続期間も長い. 早産低体重児群では, さらに高く, 長期残存し, 減少も緩慢である. α_2-Macroglobulin 値は前者とは逆に分娩後増加し, その値は低体重児ほど低いが, 以後の増加は著明である. 4. α_1-Fetoprotein の産生については, 胎児肝, 胎盤を検索し, 胎児肝にのみ螢光抗体法によりその存在をみ, 組織培養法によりその産生を確認した. 以上の結果から, α_1-Fetoprotein は胎児肝で産生され, 自己の発育に従って次第に減少し, 生後約1週間で消失する胎児特有の蛋白質であることがわかった. 従って, 生後, 低体重児のような未熟性の強い場合には, その消失が遅延するものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-06-01