性行動と妊孕性について
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概要
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性行動の本質についての研究は近年までには多く散見するが, これを妊孕性の面よりとらえた報告はない. 従って著者は雌ラットが交尾後容易に妊娠する事実を性行動の方面より検討し, さらに性分化の立場からも考察した. 発情前期雌ラットのL/M比は他の時期に比して高く, この時期の妊娠, 偽妊娠の率が高くなり, lordosis, ejaculation の回数が多い程妊娠, 偽妊娠も高頻度となる. 生後5日目のラットに 1〜1000μg testosterone propionate (TP) を投与した所, 多量TPを投与したものは排卵がなく, 正常な交尾をし得ず, 特に生後1日, 2日目のラットに TP 100μg 投与では交尾反応かにぶかった. 更にその時期のラットに estrogen, progesterone を投与すると交尾能が高まった. 生後TPを投与した時期の下垂体 gonadotropin 値を測定した所, 生後まもない時期が高くその後漸次減少する傾向があった. 偽妊娠, 妊娠発生頻度の増加を prolactin の面より検討すると, 交尾刺激の高いもの程 prolactin は一時的に増加し, ついで急速に放出される. 以上のことから, 生殖生理学の研究の上に性行動の研究も意義あるものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-05-01