女子骨盤の発育と卵巣機能
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概要
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できあがつた骨盤の大小と分娩の難易との関係についての臨床的研究は多いが, 狭骨盤など異常骨盤生成の原因を検討するため骨盤の発育過程を分析した報告はほとんどない。よつて著者は, 男子に比べて明らかに大きい女子骨盤の発育が卵巣機能の成熟過程と深い関係を有することを予想し, 次の点につき検討を加えた. I. 小児〜思春期における男女骨盤の発育過程と卵巣機能との関係を検討し, 1.骨盤並びに身体(身長・スパンなど)の外計測値および骨盤指数の年令的推移線から, 女子骨盤の発育が11才より顕著になり, 以後15才までは身長の伸びに比して骨盤の発育が著しいこと. 2. 女子骨盤の発育は組織学的卵巣機能指数および月経発来率からみた卵巣機能の発育と時期的にほぼ平行していること. 3. 女子骨盤の身長の伸びと比較しての発育速度のピークは卵巣機能の完成する時期より1〜2年早く15才ころにあることがわかつた. II. 次に性機能異常患者における骨盤の発育と卵巣機能との関係を検し, 1. これらの患者での骨盤レ線計測値は正常婦人に比し各径線とも短縮しているが, 原発性無月経では短縮の程度が最も著しく推計学的にも有意差があること. 2. 無月経患者では子宮腔長, 腟脂膏指数および尿中estrogen量からみてestrogen活性の低下がみられるが, 原発性のものでは特にその低下が著しいこと. 3. Estrogen活性低下の程度と骨盤諸径線の短縮の程度との間には平行関係のあること, がわかつた. III. 以上により, 女子骨盤の発育は思春期における卵巣機能の発育程度と密接な因果関係があり, 特にestrogenが重要な役割を果たしていることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-10-01