子宮頸癌に対する術前ラジウム照射の影響に関する研究
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概要
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札幌医科大学産婦人科学教室では1957年来,子宮頸癌根治手術に際し全375例に術前3,000ないし5,100mg時のラジウム照射を行つて来た.その目的は照射による原発巣の鎭圧縮少と術中遠隔への癌巣散布防止である.著者は本照射の意義を明らかにする為,腟脂膏,biopsyの変化より原発巣表層への影響,腟壁,子宮頸腟部,旁結合織及び,骨盤内リンパ節の諸変化を検索し,以下の結果を得た.又少線量により原発巣鎭圧の目的を達し,同時に原発巣の変化が予後推定の一助となる事を知つた. i.腟脂膏は照射前,照射中及び照射終了後の患者より逐日的に1回につき2枚,総計1,000枚のプレパラートを作成し,放射線感受性を,Grahamの規準に従い観察したが,効果は70%を越えた. ii.同様照射前,経過中,終了後の患者41例より124個のbiopsyを採取し,原発巣の照射効果をみたが照射終了時5,100mg時で癌巣の消失はほぼ100%であつた. iii.旁結合織の蔓延頻度は90例中25例(27.8%)であつた.臨床的及び組織学的浸潤の一致は56.7%で,1期で19.1%の蔓延を見た.進行期との関係は,その進行と共に増加を示した.又CPL分類との関係はC型最少,L型最多であつた.左右蔓延差はめだたなかつた.旁結合織蔓延陽性群にリンパ節転移は多かつた.照射後腟壁癌巣遺残群では50%に蔓延を認めた. iv.骨盤内リンパ節転移頻度は,8190個中184個(2.2%)で進行期と共に転移率を増し,CPL分類ではL型に最多であった.部位別では1次節に多く,大きさ別ではその増大と共に転移率を増した.腟壁遺残群の転移頻度は66.7%であつた. v.子宮頸腟部における照射後遺残癌巣活性度と,占居部位,リンパ節転移,旁結合織蔓延及びCPL分類との関係を見たが,明らかに照射効果良好群に蔓延転移が少なかつた.CPL分類ではC型がやや感受性良好であったが,P型,L型間の差は無かつた. vi.著者の前照射では,照射効果は原発巣では内子宮口迄及び,旁結合織には殆んど効果を認めず,リンパ節には全くこれを認めなかった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-07-01
著者
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