子宮腟部異常上皮に関する剥離細胞学的,組織学的,並びに酵素組織化学的研究
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概要
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子宮頚癌の早期発見の目的で腟脂膏のPapanicolaou染色及び試験切除組織による病理形態学的検索は重要な事である.しかし,正常上皮と癌との間には所謂境界病変が存在し,その定義も学者により一定でない.著者はその境界病変の患者77例中,6年間確実に追跡出来た18例について検討した.その結果,異型上皮のほとんどは4〜5年後に正常上皮へ復帰したが,1例は4年後に扁平上皮癌に変つた.しかも形態学上,正常上皮に復帰した異型上皮と扁平上皮癌に変化したそれとの間には上皮の個々の細胞及び剥離細胞には大差ない事が解つた.そこで著者は武内法によるPhosphorylase反応(以後P. Hase反応)を境界病変(変化上皮)に応用し,組織細胞及び剥離細胞の両レベルで検討した.変化上皮はGlatthaar Mullerの分類を用いた. (1) 正常上皮では基底層は陰性で旁基底層に陽性であり,本酵素活性の高い事を示した.剥離細胞では前角化細胞,中間層細胞に紫紅色反応を呈し,P.A.S.反応では陽性であつた. (2) 異型上皮,不穏上皮ではP. Hase活性は正常上皮のそれとほぼ同様であるが異型上皮では,基底層の増殖部に青色反応を示し,本酵素活性の強い事を示した.又,Papanicolaou分類Class IIIの細胞では小型の非癌異型細胞に青色反応が強い傾向を示した. (3) 扁平上皮癌では本酵素の局在は極めて多様で,細胞の形態とは無関係に陽性ないし陰性である.Papanicolaou分類Class IV及びVでは癌細胞に青色反応から紫紅色反応を示し,一般に小型癌細胞に青色反応を呈し,大型癌細胞に紫紅色反応を示す傾向を知つた. (4) 青色反応系のP. Hase反応は,著明な増殖のある増殖細胞に出現するので,本反応のある際は増殖の盛んな事を示す細胞増殖の"場"がある事を物語つており,かかる場合は特に注意を必要とする.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-07-01