当教室3年間の周産期死亡児70剖検例について
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概要
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子宮外生活が可能であると考えられる周産期における児死亡に関しては,欧米においては勿論のこと,本邦においてもかなり多数の剖検に基づいた新生児死因究明に関する業績が見られる.新生児の死因は病理組織学的な研究によつて一元的に解明されるものでは勿論ないが重要な一手段であり,ひいては新生児管理上大いに役立つものである. 今回,昭和38年1月より同40年12月迄の3年間,当教室において出生した児2049例のうち,周産期における死亡児56例と派遣病院から送られてきた周産期児死亡19例を加えた75例について調査した結果,分娩前死亡は15例(20.0%),分娩中死亡7例(9.3%),分娩後死亡53例(70.7%)であり,これらについて死亡時期,生下時体重,分娩様式等の臨床的立場より検討を加え,肺換気異常12例(16.0%),奇形13例(17.4%),早産未熟16例(21.4%),黄疸2例(2.7%),分娩外傷,前置胎盤,胎盤早期剥離,母体出血,〓帯巻絡,各1例(1.3%),第2期遷延4例(5.4%)の結果を得た.更にそのうち70例について剖検を行ない病理学的検索を行なつたが,多様な主要所見のうち肺拡張不全,肺炎,肺出血,肺硝子膜症,大量羊水吸引症候群等の肺病変が多くの部分を占めており,諸家の報告と同様肺の病的所見が周産期死亡の原因の1つとして重要な鍵を握るものであると考えられ,特にこの方面から詳細に検索した結果,未熟児に対する対策は勿論のこと,肺拡張不全に対する対策の必要性が痛感された.また現在これらに対する積極的対策として,マスク,挿管等による酸素投与があるが,充分な効果をあげていない事が今回の研究で判明した.それ故経気道以外の経路により組織低酸素血症を軽減する何等かの方法が必要であるように思われる.
- 1967-06-01