HeLa細胞に対する腟トリコモーナス原虫接種実験 : 特に腟トリコモーナス原虫の組織破壊作用について
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概要
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1940年Trussel等が腟トリコモーナス原虫(以下「ト」原虫と略す)を健康人の腟に接種して腟炎な惹起することに成功して以来「ト」原虫の病原説がほゞ確立するに至つた. しかし「ト」腟炎患者の腟内容物を鏡検すると「ト」原虫の外に多数の多種類の細菌,白血球及び破壊された腟上皮細胞が認められる.従つていわゆる「ト」腟炎が「ト」原虫自体によつて惹起されるのか或いは「ト」原虫と他の細菌の共同作用によるものか,又腟上皮細胞の破壊現象が「ト」原虫自体によつて起るとするならば「ト」原虫の運動によるものか或いは「ト」原虫がToxinを出すと仮定し,このToxinによるものか等の問題は完全に解明された問題とはいいきれない. 我々はこの問へのアプローチとしてHeLa細胞に純培養した「ト」原虫及び濾過液を投与し「ト」原虫単独によるHeLa細胞への影響を追及し次のような知見を得た. 1) 他の細菌との共同作用によらず「ト」原虫単独でも組織破壊作用は起し得る. 2) 「ト]原虫接種後24時間でHeLa細胞に小孔が形成され,次いで細胞の破壊及び変性が周囲に向つて進み72時間後にはHeLa細胞は殆んど全部破壊された. 3) 「ト」原虫の組織破壊作用は「ト」原虫の出すToxinによるというよりも「ト」原虫の活発な運動が主体を演ずると思われる. 以上のことより「ト」原虫の組織破壊作用は予想以上に強力で「ト」腟炎の腟発赤,出血,腟上皮細胞の破壊等の臨床所見の発来は容易にうなずける.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-06-01
著者
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