晩期純粋妊娠中毒症患者の腎クリアランスに関する研究
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概要
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晩期妊娠中毒症では各種臓器に器質的並びに機能的障害がみられるが,就中腎臓は著明な病変を起し易い重要な臓器である. 晩期妊娠中毒症の腎機能を論ずるには,既往に腎-血管系疾患のある混合型を除き,妊娠によつて初めて発症したと思われる,純粋中毒症について研究することが大切と思われるので,こゝには可及的厳重に純粋中毒症のみを選んで実験の対象とし,代表的な腎機能検査法である腎クリアランス試験を行ない,腎ク値と中毒症臨床像との関係,更に腎ク値と後遺症との関係を検討した. 中毒症の観察に当つては,i) 中毒症の重さと腎ク値,ii) 中毒症の存続期間と腎ク値,iii) 腎ク値と後遺症遺残について,それぞれを妊娠時の腎ク値と産褥時のそれとに分けて比較検討した. その成績は,中毒症の臨床症状の軽重と妊娠時腎ク値との間にはGFR, RPFとも密接な関係がみられ,重症例の腎ク値は明らかに低下していた.又中毒症の存続期間の長いもの程腎ク値は低下する傾向がみられた.これに対し産褥時の腎ク値と存続期間とは或る程度の関係を認め得たが,中毒症の重さとは関係がみられない.又妊娠時の腎ク値は後遺症遣残とやや関連性を認め,妊娠時の腎ク値から後遺症を予測することは或る程度可能なようであるが,更に産褥初期の腎ク値低下例からは後遺症遺残が高率にみられることから,産褥時の腎ク値の方が妊娠時よりも後遺症遺残を推定する上に役立つものと思われる. 更に中毒症患者に腎生検を行なつて腎病変と腎ク値との関係を検討したが,両者の間に相関関係を認めなかつた.尚,子癇3例について臨床症状と腎ク値並びに腎生検像との関係を追求した結果,妊娠中は強度の腎ク値低下や腎病変を認めたが,分娩後は他の中毒症と同様比較的早期に回復するのをみた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-06-01