子宮収縮剤の作用に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
硫酸スパルテイン, マレイン酸メチルエルゴメトリンおよび塩酸キニーネの子宮筋収縮作用を, ダイコクネズミ摘出子宮を用い収縮波形記録, 細胞外誘導活動電位記録および細胞内電位記録により比較検討した.1)硫酸スパルティンは性周期や妊娠の時期に無関係にほゞ一定の感受性を示した.マレイン酸メチルエルゴメトリは妊娠末期に感受性の上昇を示した.塩酸キニーネは妊娠経過とともに感受性が増加した.2)硫酸スバルティンは著明な緊張性収縮を示し, 高濃度でれん縮を起こした.マレイン酸メチルエルゴメトリンは緊張性収縮やれん縮は起こさず, 収縮頻度および収縮振幅の増加だけが認められた.塩酸キニーネによつては緊張性収縮を示し, 高濃度では収縮が抑制された.3)細胞外誘導活動電位については3剤とも放電群頻度を増加した.さらに硫酸スパルティンは放電群持続時間を著明に延長し, 放電頻度およびスパイク振幅には著変を起こさなかつた.マレイン酸メチルエルゴメトリンは放電頻度, スパイク振幅および放電群持続時間には大きな影響を与えなかつた.また塩酸キニーネは放電頻度を著明に減歩させ, 高濃度ではスパイク振幅も滅少し, スパイク放電はまばらとなつた.なおどの場合でも放電群と収縮波とはよく同期した.4)妊娠末期ダイコクネズミ摘出子宮胎盤非付着部の細胞膜静止電位は47.5±0.4mVであり, 硫酸スパルティン0.1mg/ml作用時には42.0±0.6mV, マレイン酸メチルエルゴメトリン10^<-4>mg/ml作用時には43.5±0.5mv, 塩酸キニーネ0.01mg/ml作用時には45.4±0.7mV, また同剤0.1mg/ml作用時には45.2±0.9mVであつた.また細胞膜活動電位は Pace maker 細胞型のものと follower 細胞型のものが認められた.以上より, これら3収縮剤の子宮筋借対する作用には明らかな差異が認められ, その作用機序は異なつたものであると考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-12-01