子宮収縮が胎児に及ぼす影響
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概要
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胎児心電計及び分娩監視装置を使用して分娩時,特に分娩第2期における子宮収縮と胎児心拍数変動及び胎児脳圧の変化の関係について研究し,分娩時に胎児に及ぶdistressについて考察した. A) 胎児胎盤循環に及ぼす子宮収縮の影響は,その収縮の強さばかりでなく,この収縮の持続時間が問題になると思われるので収縮の強さ及びその持続時間と胎児心拍数との関係を調査するため20mmHg, 30mmHg, 40mmHg, 50mmHg以上の各々の子宮収縮持続時間と胎児心拍数変動との関係を子宮収縮直前の胎児心拍数と比べて検討した. 1) 子宮収縮時間と胎児心拍変動数との間に20mmHg以上の収縮圧との相関係数γ=+0.29, 30mmHg以上のγ=+0.29, 40mmHg以上のγ=+0.28, 50mmHg以上のγ=+0.25,であり20mmHg以上,30mmHg以上では有意の正の相関があつた. 2) 子宮収縮と胎児心拍数の最低値についても有意の相関があつた. B) 子宮収縮中の胎児心拍の変動を谷型,山型,増減型,増加型,減少型,平担型の6型に分類し子宮収縮時間と各型の出現を検討した. 1) 20mmHg以上の収縮時には平担型が46%で約半数を占め,谷型が26%を占めた.20mmHg以上の収縮時に比べ40mmHg以上の収縮では変動する型,特に谷型,増減型が多く約70%を占めた. 2) 40mmHg以上の子宮収縮圧の時と40mmHg以下の子宮収縮圧の時との各型の分布を比較すると谷型,増減型が40mmHg以上の時に多かつた(33.28>X^2=11.07). 3) 以上の事から子宮収縮が胎児に及ぼす影響として40mmHg以上の収縮圧,即ち子宮のTonusの平均10mmHgを加えると50mmHg以上の収縮圧の持続時間に密接な関係があると考えられる. C) 子宮収縮時の胎児心拍数の変動と新生児仮死について,a.子宮収縮に伴なう胎児心拍の変動,b.仮死と心拍変動の型,c.子宮収縮終了に伴なう胎児心拍の回復,d.棄却限界下限以下の胎児心拍の持続時間の点について検討した. D) 胎児脳圧変化の測定は家兎胎仔を用いて,子宮収縮圧の測定と同様に内径0.8mmの穿刺針を用いて胎嚢を通して直接胎仔頭部に刺入した. 1) 子宮収縮中の胎仔脳圧の変化は2〜10mmHgに及んだが子宮収縮曲線とは関係なく健康な胎仔にあつては子宮収縮が脳圧の変化に直接影響しないようである. 2) 子宮収縮圧が生理的範囲においては胎児脳圧は収縮の影響を受けないが死亡直前に於ては胎児脳圧の変動として現れる. 3) 胎仔頭部の頻回又は強度の圧迫によつて胎仔心拍は著明なBradycardiaとなる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-04-01
著者
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