抗生化学療法剤の胎児,新生児に及ぼす影響 : 特に体内移行に関する研究
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概要
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抗生化学療法剤は胎盤通過性,毒性及び臓器親和性の面でそれぞれ異つた特徴を有し,過量投与の際,生体機能の未熟な胎児,新生児への影響が問題となる.このような観点から繁用される抗生化学療法剤(ペニシリン系(PC系),クロラムフエニコール(CP),テトラサイクリン(TC),マクロライド系及び持続性サルフア剤)の胎児への移行状態,並びに新生児血中濃度を中心に検討した.まず妊娠ラツトの臓器内濃度は脳を除いて,肝,腎を中心にかなりの濃度分布を示し,子宮,胎盤,さらには胎仔肝にも移行するほか,妊娠中期の人胎児臓器への移行を認めることが出来た.分娩時に投与した抗生化学療法剤の〓帯血への移行率は抗生物質で10〜30%であるが,持続性サルファ剤では80〜90%とほゞ定量的に移行し,連続投与で多少蓄積傾向を有し,後者では新生児における排泄遅延傾向が認められた.次に従来殆んど測定出来なかつた新生児抗生物質血中濃度と尿中排泄率を微量法で測定し,PC, CP, TCの筋注時は一般に成人に較べ血中濃度が非常に高く,特に生後日数の若い程濃度が高い結果を得,各薬剤とも生後日数の差でピークが異るが,これは吸収の度合の差による為と考えられる. さらにこれら薬剤の血清蛋白結合率と臓器エマルジヨンによる不活性化を検討し,薬剤の体内活動機転の一面を推測した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-03-01