実験的子宮頚癌の電子顕微鏡的研究
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概要
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従来, 電子顕微鏡による癌研究に関しては, 多くの記載があるが, 今だに, 正常細胞と癌細胞の本質的差異を, つきとめるまでに至っていない事は, 周知の通りである. そこで, 著者は, 癌細胞の正常細胞との本質的差異の1つである周囲組織への浸潤, 破壊に注目し, これを, 電子顕微鏡的に究明すべく, 糸口を求めた. 材料は, マウスの実験的子宮頚癌に求め, これの浸潤性増殖度の異なる, 39例を, 光顕及び電顕の資料とした. その結果, 次の如き, 興味深い所見を得た. 1) マウス正常子宮頚部扁平上皮組織の基底細胞の基底側の細胞膜は, 等しい間隔を保ちつつ基底膜を伴なう規則正しい曲行性を呈するが, 扁平上皮癌組織では, これが消失し, これが癌細胞及び正常細胞との著明な差異である事を確認した. 2) 浸潤性増殖度の強い例においては, 基底膜の消失, 及び種々の形を呈する細胞質突起を観察した. これらの突起をその形態から4種に大別し, 浸潤性増殖度の強い例に, 高頻度に見る事から, これ等各種の変化は, 浸潤の段階ではないかと推論し, 更に, 3) 転移を見た例では, 明るい癌細胞質突起が, 直接基質の細胞の細胞質内へ浸入していると思われる像を観察した. この様な例では, 基質の細胞に変性の像を認めた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-12-01