切迫流産における2, 3の内分泌学的検索とその意義について
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概要
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流産の成因は複雑であるが, 胎児側と母体側に大別される. 妊卵の着床までの過程には間脳下垂体卵巣系が, その後の維持及び継続には胎児と胎盤が一体となり営まれているとみなされている. したがってその成因は別として流産生体におけるホルモン環境を知ることは胎児胎盤系における病態あるいは異常の有無を知る手段の1つとみなされる. したがって切迫流産妊婦74例, 正常妊婦26例及び非妊婦6例を対象に尿中 Pregnanediol (以下Pdと略), 17KSを測定し併せて基礎体温 (BBTと略) 曲線, 腟内容塗抹所見について検索をおこない次の結果を得た. 1) 切迫流産例の尿中Pd量は一般に正常妊婦のそれに比べて減少し, また正常妊婦の平均値以下のものでは予後不良のものが多い. 2) 流産徴候と尿中Pd量との間には一定の相関関係を認められない. 3) Gestagen投与後Pd量の増加を認めたものは一般に予後良好, 減少したものあるいは増加の認めがたいものでは予後不良である. 同様の傾向は安静のみの対照群においても認められた. 4) BBT曲線は尿中Pd量の推移と一致するため, 流産予後あるいは治療効果の判定の補助診断法の1つとなるとみなされる. 5) 尿中17KS量には一定の傾向を認めることができなかった. 6) 腟内容塗抹所見においては卵胞期または排卵期類似の所見を呈したものが多い. Gestagens投与後黄体期類似の所見に変ったものでは予後が概ね良好であった. したがって切迫流産例における尿中Pd量の減少, あるいはBBT曲線, 腟内容塗抹所見にみられる異常は胎児胎盤系としての Progesterone生成の低下, または変調を示したもので流産の成因あるいは病態を示したものとは受取れない.
- 1967-12-01