子宮頸癌の電子顕微鏡的研究特に放射による病変に就いて
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概要
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放射線による癌細胞の形態学的変化を電子顕微鏡的レベルで検討するため以下の実験を行つた. 照射術式は近接照射Co^<60>, Raと遠隔照射Co^<60>に分け, 近接照射例では教室の第二類の手技に従い小線源分割小量照射, 1回大量照射及び分割大量照射の3群に分け, 照射線量はガラス線量計及び線量分布図に基いて深部量Rを決めた. 一方遠隔照射 C0^<60> (東芝RCV50-1型, 公称2,000mc, SSD60cm, 60γ/m) 例では子宮腟部を中心にして照射野 (13×13cm^2) は前後各1門とし1回の空中表面線量400R (深部量200R) で照射し, 病巣線量はシンチレーション型線量率計 (probitron)で実測し可及的線量の正確さを期した. 照射後は24時間目に正確に組織を採取し, 更に時期的推移と細胞障害との関係を観察するために照射後2日目, 5日目, 1週目, 2週目の各期間にもそれぞれ採取した. 各線量と細胞障害との関係は次の如くである. 1) 細胞膜は約1800Rで膜縁に顆粒が集合し始めるが膜の抵抗性は強い. 2) 細胞間腔は約1800Rで拡大し始めるが, 時間的推移により更に拡張する. 3) 細胞質ではa) ミトコンドリアは早期に障害が起り, 内腔が膨化, 約1800Rで膜破壊があり, 3000Rで消失する. Cristaeは外膜よりその変化が早く, 基質の淡明化が起るが, その逆も認められた. b) 小胞体は粗面小胞体に変化が現われ易く, 滑面小胞体には変化が少ない. 粗面小胞体は約1800Rで離間, 分散が起り, 脱リボゾーム顆粒を始める. c) 細胞基質内顆粒成分は約1800Rから電子密度の種々な顆粒が出現し, 約4000Rでは変性融解のため電子密度が高い260〜560mμの大顆粒が出現し, 限界膜を有するものと, 有しないものがあり, 有しないものはミトコンドリアの変性過程と関係ある像を認めた. 4) 核質は約2000Rで変化が起り, 核縁に凝集し, 8000R以上では核膜2重構造が消失する. 5) 間質細胞では3000R位から線維芽細胞, 膠原線維, 貧食細胞が出現するが特に貧食細胞は1800Rから出現する. 1000Rで血管内皮細胞の腫大, 3000Rで内皮細胞は萎縮状になる. 6) 1回照射後の細胞障害と時間的推移との関係は, 2,5,7日と時間の経過と共に細胞オルガネラ及び基質障害が強くなるのに反し, 一般に核質の障害は少い. 併し2週後には核にも変化が起り始めた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-12-01
著者
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