子宮頚癌根治手術後の排尿障害について特に排尿機序における骨盤神経の意義
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概要
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子宮頚癌根治手術後の膀胱・直腸麻痺は, 避けられることなく全例に起り, 他の婦人科手術後の場合と質を異にするのは周知の事実であり, 従来は癌の根治性のためには止むを得ないこととされてきたが, 小林はこの膀胱麻痺の原因である膀胱支配植物神経 (主に副交惑神経である骨盤神経) の切断による神経因性膀胱の根本的対策として, 基靭帯内の植物神経温存法を施行し, 最近は末梢線維まで温存するように改良した. そこで膀胱支配植物神経温存法の基礎となる骨盤内植物神経の走向を解剖・組織学的に検討し, 骨盤神経は第2・3・4仙骨神経より分れ, 骨盤底より基靭帯下部を子宮頚部に向ってほぼ直上し, 基靭帯血管群と容易に分難することができ, 初期の温存法でその根幹が充分温存されているのを明らかにし, 又骨盤神経は基靭帯内のみでなく仙骨子宮靭帯内にもまたがって走り, 下腹神経と直腸外側上部で合して骨盤神経叢を作り, これが子宮・腟・直腸神経叢と膀胱神経叢に分れ, 子宮・腟神経叢は根治手術で切断されるが, 膀胱神経叢は尿管の外側から旁腟組織を通って膀胱に入ることを明らかにし, 改良された温存法では膀胱へいく神経ががなり温存されているのを明らかにした. 次に排尿機序における骨盤神経の役割りを電気生理学的に検討し, 未だ報告をみない人の骨盤神経の電気刺戟実験を, 頚癌手術のさい基靭帯下部で行ない, 膀胱内圧の上昇を認め人の利尿筋の収縮に骨盤神経が重要な役割りをもつことを明らかにした. 又温存法の臨床成績を過去7年間の頚癌術後患者についてまとめ, 片側でも植物神経を温存すれば術後膀胱機能の恢復と見做される残尿の消失に有効であることを認め, しかも頚癌術後5年治癒率を低下させることなく, 癌の根治性に干渉しないことを明らかにし, 又末梢まで神経を温存する方法は更に成績が良く今後が期待される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-12-01
著者
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