下垂体性LH放出におよぼすEstrogen効果の基礎的ならびに臨床的研究
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概要
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大量のEstrogenを衝撃的に投与することによつて下垂体からLHが放出されることは,Hohlwegの実験以来,一連の動物実験によつて次第に明らかにされてきた. 一方正常月経周期に伴なう婦人の尿中又は血中ホルモン排泄パターンの研究から,排卵期にEstrogenのピークとLHのピークが一致することが証明され,間脳下垂体系におよぼすEstrogenのpositive feedback作用に排卵機構の本態的な意義が推論されるようになつた.著者はヒトを対象として,LH放出におよぼすEstrogenの中枢作用を検討し,無排卵症の診断と治療に応用する目的で以下の基礎的ならびに臨床的実験を行なつた. 正常月経周期婦人3例と各種の排卵障害婦人13例を対象に水溶性の結合型EstrogenであるPremarin 20mgの静脈内投与を行ない,投与前後のLH活性の変動を測定した. その結果,正常月経周期婦人3例では全例にEstrogen投与後LHの増量が認められ,うち2例には排卵が推定された.各種の排卵障害婦人のうち,hypogonadotropic hypogonadismの内分泌パターンを示す症例4例ではEstrogenの投与によつてもLHの増量はほとんどみられず,排卵も生じなかつた.またnormogonadotropism又はhypergonadotropismの内分泌パターンを示す症例9例のうち6例はEstrogen投与後LHの増量を示し,うち2例に排卵が生じた.以上の基礎実験成績にもとづいて,無排卵症54例の106周期に結合型Estrogenの静脈内投与を行なつたところ,12例の15周期(16.7%)に排卵を誘発することができた.また,予めPMSで卵胞を成熟させておいてから結合型Estrogenの静脈内投与を行なう方法を無排卵症33例の54周期に行なったところ,8例の10周期(24.2%)に排卵を誘発することができた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-11-01
著者
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