胎児性血色素の産科学的意義に関する研究
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概要
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胎児性血色素(HbF)が臨床上注目される様になったのは,Singer等(1951年)により比較的簡便な測定法が考案されて以来である.これ迄に産婦人科領域に於ても胎児発育過程に伴なう変化,胎児成熟度判定における意義,出生後の消失時期,さらに正常及び異常妊娠・分娩・産褥経過中の母体血HbF等についての研究があるが報告も比較的少なく,それらの成績は必ずしも一致していない.そのため胎児成熟度判定に対するHbFの意義のみならず,HbF生成や置換過程に及ぼす胎児無酸素症はじめ産科臨床的諸因子の影響についてはなお殆んど不明である.そこで著者は668例の胎児新生児のHbFをアルカリ変性法で測定し,その産科学的意義の解明を試みて以下の結果を得た. 1)HbFは在胎週数のすすむにつれ漸減し有意の相関が見られた.生下時体重,比体重,身長,胎盤重量,比胎盤などの見せかけの成熟度とは相関が認められない.2)児未熟性に関係すると思われる双胎,各種先天奇形に有意差はなく,晩期妊娠中毒症児に有意の高値を認めた.3)在胎42週以降の予定日超過例HbFは正期産(在胎38〜41週)に比べ有意の低値であり,生物学的に過熟の歴然たるClifford症候群では極めて低い.4)新生児期HbFの減少は出生時HbF値の低いもの程速やかな傾向があり,未熟児は出生後も在胎週数にほぼ一致した減少を示す.5)母体合併症(特に慢性低酸素血症)のあるHbFは対照と有意差はなく,母体年令に於ても20才以下と36才以上にやや高値が見られたにすぎない.6)初経産婦別,分娩時胎位別や仮死,死産群と対照間にはClifford症候群を除く限り有意差は見られない.7)羊水混濁例のHbFが有意に低く,Clifford症候群を含めれば死産群も有意の低値をとることは,酸素飽和度の高いHbFの減少が切迫仮死,仮死及び死産をもたらすものと考えられる.8)児性別とHbFはClifford症候群に於てのみ女児が有意の低値を示した.9)全血色素量(全Hb量)は在胎週数のすすむにつれ漸増し,HbFとは逆相関が見られた. 以上の如く分娩時のHbFの測定は生物学的な胎児成熟度判定の客観的指標として大きな意義があるものと思われる.
- 1967-10-01
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