人胎盤絨毛上皮細胞の電顕所見 : とくにその物質通過経路に関する考察
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概要
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胎盤の絨毛上皮細胞における物質のとり込み方とはき出し方の機構に関する電顕的観察所見の報告は少なくないが, 絨毛のSynzytium細胞の形態学的, 機能的特異性にかんがみ, 物質の細胞内とり込みとその後の移動経路については, なお検討すべき余地が残されている. よつて著者は, 妊娠各期の胎盤絨毛とretroprogesterone負荷胎盤絨毛とを用いて, メタクリール樹脂またはエポキシ樹脂に包埋し, Watsonの醋酸ウラニウム染色或いはMilionig氏鉛染色第2法を試みた後電顕的観察を行い, それらの観察所見を中心に考察し, 絨毛上皮細胞にみられる母児間の物質移動の機構とその経路については次の3つの経路があずかるものと推定した. 1)細胞内細管系, Synzytium細胞にはmicrovilli基部小口から始まり嚢状体, 小胞体, Golgi氏装置, 核膜等に連なる細胞内細管系通路を認めた. またこの細管系通路の一部はSynzytium細胞とLanghans氏細胞間隙に連なり, 細胞内の物質移動或いは通過の通路系となると思われる. 同様の通路系はLanghans氏細胞の1部においても認められる. 2)細胞内細胞質基質系, 細胞質基質は一般にSol状態を示し, 各種の小器官をそのなかに入れているが, 細胞膜やその細胞内小器官を通じて絨毛間腔との物質交換の経路となり, その場を提供しているものと考えられる. 3)細胞間隙系, Synzytium細胞とLanghans氏細胞或いはLanghans氏細胞相互のCrevice様間隙は直接基底膜に接続し絨毛間質を含んだ物質の通過経路となるものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-06-01