子宮頸癌術後の尿路感染症の予防に関する研究
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概要
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子宮頚癌手術後の尿路感染症は, 他の一般婦人科の尿路感染症や, 婦人科一般手術後の場合とは全く条件を異にするものであり, ひとたび尿中に細菌が陽性になると, 感受性抗生物質の大量投与を行つても殆んど菌を陰性化することは出来ず, かつこのように潜在性感染症のまゝ経過すると, しばしば顕症化するのである. この尿路感染を予防するためには, 第1には尿路への細菌の侵入を防ぐことであり, 第2に術後膀胱内の尿の滞溜を防ぎ, 第3に術後の膀胱機能を出来るだけ早く回復させることである. そしてこれらの事項は, すべて関連を持つものである. 著者は, これらの予防条件のうちまず, 排尿方法のみをとりあげ, 従来使用されている留置カテーテル法を廃止して, 術後直ちに時間導尿を行つた. すなわち, 広汎子宮全摘除術を行なつた66例を対照として, 留置カテーテル法と時間導尿法とを臨床的並びに細菌学的に比較検討した. その結果, 時間導尿法は留置カテーテル法に比して術後尿中ヘの菌の出現を遅延させ, 尿路感染症の併発を約5分の3に減少し得た. しかし最終的菌の出現率は殆んど変りはなかつた. また, 尿中から検出された菌は, Escherichia, Proteus, KlebsiellaなどのGram陰性桿菌が主体であり, これらには多剤耐性のものが多い. つぎに, この潜在性感染症を全く防ぐ目的で, Oxy-Tetracyclin, Colistin, Kanamycinなどの溶液を導尿後直ちに膀胱内へ注入する方法を61例に試みた. この結果Kanamycinの10mcq/mlの溶液を10ccずつ膀胱内へ注入する方法が最もすぐれた成績であり, これによつて子宮頚癌手術後のグラム陰性桿菌群による尿路感染症を潜在性感染症をも含めて殆んど完全に予防することが出来た.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-06-01