新生児及び未熟児に於ける心電図変化と血清電解質殊に血清カリウム値との関連性について
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概要
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子宮内環境から大気内環境への新生児の適応過程の病態生理を知る一つの試みとして, 出生直後より生後7日に至る期間の新生児について, これを正常群, 仮死群及び未熟児群の3群にわかちその各々の群の心電図変化を比較し, 更にこれら3群の血清カリウム並びにナトリウム値の経口的変化についても同様の比較を行つた. その結果(1)まず新生児心電図に於て心拍数でぱ各群とも著明な差異はみとめなかつたが, 心電図波形は対照群に比較して仮死群では出生直後PR, QRS, QT, QTc等伝導時間が有意に延長し, T波振幅が高く, V_1誘導に陰性T波を示すものが多かつた. この様な傾向は生後2日目迄みられたが, 以後一般状態の恢復と共に波形の変化も改善された. 未熟児群ではP波振幅が生後3及び5日に有意に高く, QRS時間も延長し, 更に生後2及び3日に於てはQ-T及びQTcが延長した. 又V_1誘導のS波が深い. (2)血清電解質値に於ては, 血清ナトリウム値は3群ともに母体血, 臍帯血及び新生児血に著明な差異を認めず平均値は142〜143mEq/lの間にあつた. 血清カリウム値は各群ともに臍帯血値が母体血値に比し有意に高く, その後生後2日で最高となつた後次第に低下した. 更に仮死群では心電図波形の変化が著明な出生直後, 生後2及び3日目に対照群に比し有意の高カリウム血症がみられ, 又未熟児群では生後5日目を中心として同じく高カリウム血症がみられた. (3)この様に心電図波形の変化と血清カリウム値の変化がある程度一致したので両者の相関を求めたが, 出生後間もない時期に於ては血清カリウム値が7.1mEq/lを越えるとPR, QT及びQTcが延長し, P波振幅が低く, T波振幅が高い傾向がみられた. この相関は生後次第に失われ, 高カリウム血症に伴う新生児心電図波形の変化は新生児に肺呼吸への適応不全, 即ちアシドーシスが存在する時, 特に著明になるのではないかと推測した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-04-01