妊娠時の糖尿に関する臨床的研究
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概要
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昭和38年2月1日より同39年5月31目まで東京都立築地産院に於ける外来妊婦総数4,198名について23,035回検索を行い, 又そのうち同期間に分娩に至つた2,304名につき更に詳細に新しい特異的な測定方法を基盤として妊娠時の糖尿についてその発現頻度や時期及び血中真正ブドウ糖などの関係を調べるとともに更に産科的異常などの統計的観察を試み幾つかの母子保健上興味ある知見を得た. 1. 妊娠中の糖尿発生頻度は還元法では9.6%, ブドウ糖のみは7.4%に認められる. 従つてブドウ糖以外の乳糖などの糖は2.2%に認められた. 2. 妊娠中は多くの場合hypo-uricemiaの状態にあるので還元反応法より酵素反応の方が妊娠中にはより鋭敏にブドウ糖尿を検出する事が知られた. 3. 糖尿発現時期は妊娠後半期が最も多く, 第7週以前では殆んど発現しなかつた. 4. 妊娠糖尿陽性者で尿中ケトン体を伴うものは非常に僅かであつた. 5. 糖尿の発生頻度は年令別の差異はなく経産婦に僅かに多く, 又その発現回数は1回陽性者が半数を占めた. 又陽性者は体重の増加率が多かつた. 6. 糖尿陽性者と陰性者の分娩様式に差が認められなかつた. 7. 巨大児の既往のあるものは必らずしも糖負荷試験値は高くなく正常に近いものが多く, むしろ母親の体格肥満などに関係することが多かつた. 8. 糖尿陽性者の血糖値は正常値が多いがその6分の1に軽度陽性者を認めた. 9. 空腹時血清コレステロール値は比較的血糖値が低いものでも高いことから, 妊娠時の脂質代謝変化に関連があると推定され, 当然糖尿病での脂質代謝異常との類似性も推察せられる. 10. ブ糖尿陽性者と陰性者の母児の状態の主なものを比較すると次の如くである. a)妊娠中毒症を合併したもの: 陽性者51.1%に対し陰性者24.1%, b)前期破水: 陽性者15.5%, 陰性者8.4%, c)羊水過多症: 陽性者1.4%, 陰性者0.3%, d)巨大児: 陽性者2.8%, 陰性者1.7%, e)未熟児: 陽性者4.2%, 陰性者7.3%, f)奇形: 陽性者1.5%, 陰性者0.7%, g)死産: 陽性者1.3%, 陰性者0%, h)早産: 陽性者2.4%, 陰性者3.8%, i)新生児胎児仮死: 陽性者6.4%(陰性者の約2倍), j)新生児発育状態に於ては両者間に於て有意の差なし. 11. 糖負荷試験陽性者及び陰性者では死産は6.5%:2.7%, 羊水過多症は6.5%:1.4%, 奇形6.5%:3.4%でその他では両者間有意の差なし.
- 1966-04-01
著者
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