妊娠時とくに晩期妊娠中毒症におけるβ-N-Acetylglucosaminidaseの基礎的並びに臨床的研究
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概要
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糖蛋白の代謝に重要な酵素の1つとしてβ-N-acetylglucosaminidase (β-NAG)があるが, これに関する知見はきわめて少ない. 私は産科領域における本酵素の意義, とくに晩期妊娠中毒症の際における本酵素活性の意義を明らかにするため検討を加え, 若干の新知見を得た. 本酵素の測定にはPhenol-N-acetyl-β-D-glucosaminideを基質として用い, 酵素により遊離するphenol量をもつてその活性を表わした. 検査対象としては晩期妊娠中毒症のほか, 正常妊産婦, 新生児, 梅毒妊婦, 早産などをえらび血清及び胎盤組織内酵素活性を測定し, とくに妊娠中毒症における蛋白代謝異常, とくに糖蛋白代謝異常の解明につとめた. 血清β-NAGは妊娠末期に著しく上昇し, 分娩後速かに正常値に復する. 新生児においては母体より著しく低い. 胞状奇胎では正常妊娠とほゞ同様である. 妊娠中毒症のうち高血圧のあるものは低下傾向にあり, 浮腫のみのものでは上昇している. 蛋白尿のみのものでは正常妊娠とほゞ同様である. 降圧, 利尿剤により症状軽快すると, 血清β-NAGは正常妊婦の値に近づき, 症状の悪化に伴ない可逆的に血清β-NAGは異常となるなど, 臨床症状と酵素の消長がほゞ平行して変動する. 絨毛組織のβ-NAGは低いが, 妊娠中期より胎盤の単位重量当りの酵素量は急激に上昇し妊娠末期まで持続する. 胎盤組織内の酵素は極めて大量である. 妊娠中毒症においては胎盤全体に含まれる酵素は, 正常胎盤と差異がなかつたが, 梅毒妊婦の胎盤では著しく低い. 基質を用いるin vitroの実験から, 生体内における酵素活性の意義を即断することは困難であるが, 妊娠時におけるβ-NAGの特有の変動及び妊娠中毒症にみられる臨床症状との関連性などからみて, 本研究酵素活性と密接関連があると推定され, 今後中毒症研究の上に, 大きい指針となると思われる.
- 1966-02-01
著者
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