人胎盤並びに絨毛性腫瘍の核酸に関する組織化学的研究
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概要
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顕微分光法的に正常胎盤, 絨毛性腫瘍の細胞核内Feulgen-DNA相対量及び細胞質内RNA吸光率を追求し, これ等を対比考察した. まず正常胎盤のDNA量の観察では, Syncytiotrophoblast, Cytotrophoblast, 絨毛基質細胞及び脱落膜細胞等のmodeは, ほぼ一致して2倍体域に存在し, 又それぞれの平均値も2倍体域に認められるが, 分散の度合はCytotrophoblastが最も大きく, 4倍体域細胞の出現頻度が, 他系細胞のそれよりも増大して認められる. 次いで全胞状奇胎例では, 正常群と比較して分散が大きく, Polyploidy, Aneuploidyの出現が高まつていることか見られた. 破壊性奇胎では, 絨毛形態部位Trophoblastよりも, 子宮筋層内Trophoblast集団部位に於て一層分散が大きく, Feulgen-DNA量の平均値は, 正常群のほぼ2〜3倍を示す. 更に絨毛上皮腫例の分散は, 正常群と比較し非常に大きく, 又全胞状奇胎例と比べて一般に大きいが, 破壊性奇胎例と対比した場合, その分布域の縮少した症例より, 殆んど同等の分布所見を呈する症例まで種々あり, 個体差が注目され, これ等のmodeは, 高2倍体域ないしは低4倍体域に存在すると考えられる例が過半数を占めた. 細胞質内RNAに関しては, Cresylviolet陽性物質に就き検索したが, 概して絨毛性腫瘍Trophoblast吸光率は高く, 正常妊娠中最高の吸光率を示した妊娠初期のSyncytiotrophoblastよりも一段と高値を呈する細胞が, 比較的多数認められ, 又絨腫自身における偏差は最も大きい. 以上の観察所見から, 絨毛性腫瘍TrophoblastのDNA合成は, 正常群諸細胞よりも一層高いlevelで行なわれていることが示唆され, 又RNA吸光率の点から, 絨毛性腫瘍Trophoblastは, 一般に蛋白合成速度に於て正常群を凌ぐものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-12-01