人胎盤絨毛上皮細胞の黄体ホルモン分泌に関する電顕学的考察
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概要
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人胎盤絨毛上皮細胞に於ける黄体ホルモン分泌は, Synzytium細胞で行なわれていることは, 多くの学者の認めるところであるが, そのどの小器官に関係が深いかは全く解明されていない. そこで筆者は電子顕微鏡を用いて殊にprogesterone分泌とその過程について形態的検索を行い, 次の結果を得た. 1)正常妊娠初期絨毛のSynzytium細胞では小胞体はほゞ円形を呈し, 小さく滑面小胞体及び粗面小胞体, RNA顆粒, Mitochondria, Golgi装置を認め, 中期及び末期のそれにおいては滑面小胞体が多く, その形は多形性大小さまざまとなり, 一般に脂肪顆粒が増加する. 2)流産絨毛のそれにおいては滑面小胞体, Mitochondria, Golgi装置の退行変性が著しい. 3) progesterone 500mg以上を負荷した初期絨毛においては滑面小胞体の拡大及び融合する所見があり, 又1000mg負荷例では, 核膜が著明に膨化し二重膜構造を呈するのでその外膜が小胞体様を呈す. 4) retroprogesterone 500mg負荷例では滑面小胞体の増加が著しく, 多形性を示し, 不正形となり脂肪顆粒が増加し, 又その一部には脂肪顆粒に近接するMitochondriaがみられる. 1000mg負荷のそれでは小胞体内腔, Synzytium, Langhans細胞間隙クレパス様間隙系, 或いは基底膜中にオスミウム好染性顆粒の集合, 或いは融合像が認められる. 5) pregnenolone 1000mg負荷のそれにおいても滑面小胞体の著明な拡大像の他オスミウム好性物質と脂肪顆粒の増加が認められ, その他Mitochondriaの肥大, 増加その他の所見が認められる. したがつて電顕レペルにおけるSynzytium細胞はその細胞内小器官とそれらの所見が, 卵巣, 睾丸或いは副腎皮質等でみるステロイド"ホ"分泌細胞のそれと著しく相似し, またこれらの小器官にみられる変化が細胞の"ホ"分泌機能の推移に一致するので, 胎盤のステロイド"ホ", 特にprogesteroneの分泌機構は胎盤絨毛上皮細胞のうち, Synzytium細胞と関連を有し, これらの細胞の滑面小胞体とMitochondriaに関係があり, 恐らくそれらの有する酵素作用によつて営まれる細胞内生合成機転の一つであると推定した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-11-01