実験的子宮頚癌発生過程におよぼすエストロゲンの影響 : オートラジオグラフィーによる観察
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概要
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卵巣を摘出したC_3H系ハツカネズミの子宮頚部に, 20-メチルコラントレン(20MC)をしみこませた木綿糸を手術的に挿入した. 手術後, 1, 3, 5, ・・・15週目に各3頭ずつ屠殺し, 子宮頚部の発癌にいたるまでを観察した. その際に, 1頭につぎ8μgのエストラジオールを週1回投与し, それが発癌過程にいかに影響を与えるかを^3H-チミジンをトレイサーとするオートラジオグラフィーによつて検索した. その結果, 1)エストラジオール非投与群は, 20-MC3週間目より組織学的変化があらわれはじめ, 7週目には上皮腫(乳頭腫), 11週目に扁平上皮癌が発生した. 2)エストラジオール投与群では, これより一段階ずつ組織学的変化がおくれた. 3)発生した子宮頚癌は, エストラジオール投与群の方が分化傾向が強く, 浸潤も弱かつた. 4)^3H-チミジンのとりこみは, 正常扁平上皮では基底細胞にのみ, 上皮腫(乳頭腫)でも間質に接する一層の腫瘍細胞にのみみられたが, 癌では間質に接する細胞には勿論, 癌巣内部の細胞にも不規則にみられた. 5)分化傾向の強い扁平上皮癌のとりこみ状況は上皮腫のそれに類似していた. 6)細胞核1個あたりの黒化銀粒子数をかぞえてヒストグラムを作製したところ, エストラジオール投与群のものからは, 非投与群のものより巾の広いパターンが得られpolyploidyを思わせるピークの出現がみられた.
- 1966-09-01