新生児脳波の発達と周波数特性に関する研究
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概要
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新生児の脳活動状態を何ら障害なく研究する方法として, 近年新生児脳波が応用されるようになったが, 未だその基準となる見解とか, 波型の発達及び分化に関する詳細な研究はない. これは新生児の心的生活状態が朦朧としており, また啼泣とか, 運動するため人工産物(artifact)が入り易く, 記録が極めて困難なためと考えられる. 私はこの様な点から電極の固定にセロイジンとcolor foamを用い, 更に覚醒水準に伴なう脳波以外の生理過程の把握を意図して眼球電位図(EOG)を同時に記録し, 新生児脳波の個体発生と経日的自発脳波の変化, 音刺激に対する誘発電位の発達と分化, 更に周期的光刺激に対する後頭部脳波の周波数特性について綜合的な経過を観察し, 次の結果を得た. I) EOGは急速で段階的な動きから睡眠深度に従つて緩やかな動きに変化する水平方向の振子様運動を示した. 2) 出生直後より脳波は, 何れも低電位で連続性の乏しい混合波型が全誘導に認められ, 生後2日間は不安定かつ未分化な波型を示し, 生後3〜4日の覚醒時には中等度振幅の律動性徐波の一過性出現と, 賦活波型との分化が目立つ. 中等度睡眠時には5〜6c/s近辺の徐波の持続する時期の分化がみられ, 又頭頂部humpの出現, 高振幅徐波の出現など睡眠波型の分化を認めた. 更に生後1ヵ月前後には覚醒時, 睡眠時共に律動波の出現が目立ち, より深い睡眠時には全誘導とも大徐波出現の時期が分化した. 3) click音刺激に対する睡眠時のK-complexは, 生後3〜4日以後頭頂部に僅かに陰性反応につづく陽性, 陰性の2相性の反応を示し, 経日的に潜時の短縮をみた. 4) 周期的光刺激に対する駆動脳波の周波数特性は, その振動系は健康成人にくらべて遅く, 生後第1日は3〜4c/s, 2〜3日は5〜5.5c/s, 4〜5日以後は8〜9c/sへと移行した. 5) 以上より生後4日以後にsleeppattern, K-complexの分化の時期と8〜9c/sへの振動系の発達し始める時期の一致を見た点は注目される所見である.
- 1966-01-01
著者
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