妊娠時のCa代謝,特に母児の相関に関する研究
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概要
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妊娠時のCa代謝に関する研究は多いが我々産科医にとつて最も興味がある母児間のCa代謝についての研究は意外に少ない.私はまず妊婦にCa含有製剤を与えた.次に妊娠動物(ラッテ)に多量のCaを負荷して胎児や新生児のCa代謝に与える影響を検討した.その結果,1) glyoxal bis (2-hydroxyanil)超微量測定法は迅速で比較的正確であり新生児血清Ca測定に使用出来る.2) Ca含有製剤投与群の母血清イオン化Ca値は非投与群のそれよりも高値である.3) 〓帯動・静脈血清総Ca,イオン化Ca値はCa含有製剤投与群と非投与群間で差はない.4) Ca含有製剤投与群,非投与群はいずれも胎児側の血清総Ca,イオン化Ca値共に母体側のそれよりも高値である.5) 新生児血清総Ca,イオン化Ca値は生後1日より2日目にかけて最低値を示し4日より5日目にかけて生下時の値よりも上昇する.6) 新生児血清総Ca,イオン化Ca値はCa含有製剤投与群と,非投与群との間に差がみられない.7) 妊娠ラッテに高Ca食を与えてもある限度以上はCaは吸収されず屎中から排泄される.8) 妊娠ラッテに高Ca食を与え,同時にVitamin Dを筋注すればかなり多くのCaが吸収されるが主として尿中より排泄される.9) Caの最大の貯蔵庫である大腿骨への^<45>Caの分布率は標準食群がVD群よりも多かつた.10) 胎盤への^<45>Caの分布率や総Ca量には各群間に差はなくいずれも低値であつた.胎盤はCaの貯蔵庫ではなく胎仔側へ大量のCaが移行するのを防ぐbarrierとなつているものと思われる.11) 胎仔頭蓋骨への^<45>Ca分布率や総Ca量は各群間では差がみられず,Caを多く摂取吸収しても胎仔頭蓋骨には化骨の異常は起らないものと考えられる.12) 胎仔全身ラジオオートグラムでは各群の母ラッテに^<45>Caを注射した後1時間で骨組織に^<45>Caの沈着像がみられ,12時間後には著明となつたが各群間には母体からの移行や胎仔各組織への沈着には差がなかつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1969-03-01