胎児血清および羊水中の正常抗体について
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概要
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新生児の感染防禦機構解明の一環として,胎児血清および羊水中の抗体価を測定し,抗体の胎盤通過性,産生時期,胃腸管吸収の有無,および正常抗体と免疫グロブリンとの関係等について検索し,次の結果をえた. 1. 胎児血清は胎生5ヵ月でSalm. typhi 0901に対し殺菌作用を示すが,羊水単独では殺菌作用を示さない.しかし,補体を添加すると殺菌作用が現われる.これは羊水中には正常殺菌抗体は存在するが補体がないためである. 2. 2-M.E.処理,Zone Electrophoresis, Ouchterlony法により,羊水中の正常殺菌抗体,細菌凝集抗体,および溶血抗体はIgG成分であることを明らかにした. 3. 胎児血清の免疫グロブリンはIgG, IgMであり,羊水の免疫グロブリンの主成分はIgGであるが,胎児血清中には認められないIgAも羊水中には存在した. 4. 羊水中IgAの消長を検討し,このIgAは羊膜より分泌され,胎児により嚥下されると推論しうる結果をえた. 5. 以上の成績から,ヒト羊水中には殺菌抗体をはじめ各種抗体が含まれていることがわかり,これらの抗体は胎盤通過性抗体,および自己産生抗体の不足を補う意味で,新生児の免疫獲得に関与するから,羊水はこの点でも重要な意義をもつものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1969-03-01