子宮頚癌の細胞診
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概要
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ひとり婦人科領域に止らず,細胞診は肺,気管支,口腔,胃,食道,膀胱など内科,外科的悪性腫瘍の検出に広く応用されている.子宮頚癌の早期診断のためにも細胞診は簡易性,迅速性の故に今日では不可欠な診断法である.従来子宮筋腫の腟上部切断後に発生するいわゆる断端癌なる概念も細胞診やコルポスコピーなどによつて前癌状態,borderline cancerの追求が行なわれるとともに著しく変貌し,現在では筋腫の腟上部切断には,予め細胞診でlesionの有無をたしかめておくぐらいのことは常識となつている.癌腫の細胞学的診断は古くは旧世紀にはじまり,既にDonne(1838)は乳腺分泌物新鮮標本によつて,初乳小体の細胞学的研究をはじめ,Walsche(1843)は〓脱細胞として現われた癌細胞のはじめての記載をしている.産婦人科領域では1920年代ではPapanicolaouの数々の業績を基としてAllen-doisy,Allen-Cornerらのいわゆる腟脂膏としてその周期的変化やまたエストロヂエン,プロゲスチンの生物学的定量法が追求された.Papanicolaou,Trautによる"腟部塗抹による子宮癌の診断"(1943)以来,急速に発展して今日では子宮癌の早期診断のため不可欠な位置を占めるに至つている.今さら繰返す要のないことであるが,子宮癌の治療は,優れた手術的療法,放射線療法,化学療法があつても,進行度III,IV期では治癒率は低く,II期癌でも永久治癒率が常に60%をうわまわることはかなり困難であるから,治療成績をあげるためには早期診断,早期治療が鉄則であることに異論はない.臨床上では子宮腟部のいわゆるin situ canccr,precancerous stage,Leukoplakia,parakeratosis,cell atypiaなどいわゆるboaderline cancerやmicrocancerを検出するためには細胞診は最もすぐれていると考えられる.組織診,コルポスコピーも有力な検診法であるが,組織診でことに小さいパンチプローベでは偽陰性ralse nega.の避け難い危険が実際にあつてまた反復実施したり,いわゆるfollowing upには適当でない.結局これ等の検出法を応用してみて細胞診て癌の存否を予備的にたしかめ組織診て最終的に癌を決定する.コルポスコピーは時々ねらい切除の目的で使用するのが,一般的であると思われる.組織診と併わせで考えた場合,細胞診の意義は高く評価されなければならない
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1969-12-01
著者
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