絨毛性ゴナドトロピンの副腎3β-hydroxysteroid dehydrogenase活性に及ぼす影響
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概要
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胎盤は多量のステロイドホルモンおよび蛋白ホルモンを分泌し,妊娠時における内分泌環境の形成に大きく寄与している.しかしこれら胎盤性ホルモンの生成機序および分泌の目的性については充分解明されてはいない. 妊娠時血中に増加しているΔ^5-3β-hydroxysteroidsであるpregnenolone,DHAが胎盤性progesterone, estrogenの前駆物質として重要な役割を果している事が明らかにされて来た.しかしこれらΔ^5-3β-hydroxysteroidsの生成の場に関しては定説がみられない. HCGもステロイドホルモン産生の場が卵巣から胎盤に移行した妊娠中期以後においても多量に分泌されている.妊娠時多量に分泌されているこのHCGが副腎に作用して,胎盤性ステロイドの前駆物質として重要な役割を果しているΔ^5-3β-hydroxysteroidsの産生分泌を増加せしめる因子として何らかの役割を果しているのではないかと考え,Wistar系雌性ラットにHCGを投与し,副腎3β-hydroxysteroid dehydrogenase活性に及ぼす影響について検索を行ない,以下の成績を得た. 1) 正常ラットにHCGを投与すると,本酵素活性は著明に低下する. 2) 卵巣剔除ラットにHCGを投与しても,この様な影響は認められなかつたが,progesteroneを投与すると本酵素活性は低下する. 3) 卵巣剔除ラットにestrogenを投与すると,本酵素活性は上昇するが,同量のestrogenと同時にHCGを投与すると本酵素活性は著明に低下し,かつ卵巣剔除無処置群よりも低下する. 4) HCG投与により,副腎steroid 11β-hydroxylase活性に有意の変化は認めなかつた. 5) これらの成績より,妊娠時多量に分泌されているHCGが本酵素活性を低下せしめる事により,副腎からのΔ^5-3β-hydroxysteroidsの分泌を促進して,これが胎盤性ステロイドの前駆物質として利用されている可能性を示唆する.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1969-10-01