胎生期及び幼若期に於ける性腺,副腎及び胎盤のΔ^5-3β-Hydroxysteroid Dehydrogenaseの組織化学的推移について
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概要
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ヒト及びラットの胎生期から幼若期にかけてのsteroid hormone産生臓器のΔ^5-3β-hydroxysteroid dehydrogenase活性を組織化学的に検索した. (1) 睾丸a) 胎生期の性管分化の起る時期の前から本酵素活性が認められたことからこの時期に睾丸からandrogenが分泌され,これが性管の性分化に主役を演じている可能性が示唆された.b) 下垂体前葉の萎縮している無脳児の睾丸は小さく睾丸全体としての本酵素活性も少ないことから,胎児睾丸のandrogen産生は自己の下垂体のICSHに依存している事が暗示された. (2) 卵巣胎生期及び出生直後には本酵素活性が認められなかつたことから,胎生期に於ける性管の分化及び出生直後の視床下部の性分化には卵巣estrogenよりも睾丸androgenの方が積極的役割を演ずる事が暗示された. (3) 副腎a) 胎生初期から本酵素活性が認められたが,ヒトでは永久層にのみ本酵素活性を認め胎児層には認めなかつた.この事はandrogen zoneとも云える胎児層でのステロイド産生がdehydroepiandrosteroneの如きΔ^5steroidに限定されている事を示唆している.b) 無脳児では胎児層の発育のみが極度に悪いことから,この層の発育が胎児下垂体に依存していることが暗示された. (4) 胎盤本酵素活性はラットではtrophoblastic giant cellsに,ヒトではtrophoblastのLanghansとsyncytiumとの両方に認められたが,ラットのgiant trophoblastの量はヒト胎盤中のtrophoblast量に比して非常に少ないから,ラット胎盤からのsteroid hormone産生能はヒト胎盤に比べて遥かに少ない事が示唆された.この事は妊娠維持をラットでは卵巣ステロイドに依存しており,ヒトでは胎盤ステロイドに依存している事とよく符合する.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1969-10-01
著者
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