胎児生理学研究を目的とする長期実験のためのRhesus猿退治頸部に対する子宮内手術法
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概要
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人胎児生理学の発展を阻止してきた最大の理由は人間に最も類似している猿胎児における長期実験の困難であつたことといえる.したがつて猿において子宮内胎児の生存および成長を阻害することなく,胎児に接近し,長期実験に必要な種々の侵襲を加えることのできる子宮内胎児手術法の確立は人胎児生理学の発展にとつて重要な基本的必要条件である.著者は長期実験を可能とする子宮内胎児頸部手術法をRhesus猿胎児において研究し種々の新方法を考案確立した.これらの新手術方法は次のごとく大別され,それぞれ詳細に叙述された.すなわち,I.T字型plasticカテーテルおよび携帯用微小ポンプを使用して子宮内胎児頚動脈および頚静脈のカテーテル法.II.(1)金属clipを用いて子宮内胎児食道の閉塞.(2)h字型plastic装置を用いて子宮内胎児において気管食道瘻の作成.III.気管液採集袋付L字型plasticカテーテルを使用して子宮内胎児気管のカテーテル法.50匹の妊娠後半期にあるRhesus猿退治がこれらの手術に使用された.このうち47匹(94%)が手術に耐え.42匹(84%)の胎児において妊娠が術後3日ないし3週間以上にわたり継続した.かくしてRhesus猿において妊娠を中絶することなく,胎児の生理的状態を維持しつゝ,長期実験に必要な胎児頸部に対する種々の外科的侵襲が可能となつた.これらの新手術法により胎児心電図直接記録,胎児血液採取,胎児血圧測定,種々の物質の胎児循環への注射,胎児気管液の採集が生理的条件下に長期にわたり連日可能となつた.また羊水過多症の実験的作成の研究も可能となつた.
- 1969-01-01