自然発症糖尿病チャイニーズハムスターの胎仔肺成熟度の検討
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概要
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糖尿病合併妊娠におけるrespiratory distress syndrome(RDS) 発症のメカニズム解明のために胎児肺表面活性物質(surfactants)について数多くの報告があるが,そのほとんどはヒト羊水または薬物依存性動物を用いた報告である。本研究では薬物依存性動物の欠点を克服するために,本邦で初めて自然発症I型糖尿病チャイニーズハムスター(CHAD)を用いてその胎仔surfactantsの動態について検討した。 1. CHAD母獣糖尿病状態の胎仔surfactants動態に与える影響について (1) 糖尿病群で母獣高血糖に起因すると考えられる胎仔高血糖が,またSevere群で有意に多数の胎仔異常が観察された。 (2) 母獣高血糖下の胎仔肺では正常群に比してphosphatidylcholine(PC)低値を認めず,dipalmitoyl-PC(DPPC)の低値を認めた。またPC分子種組成比の検討結果から,母獣高血糖が胎生後期のDPPC増加または不飽和型PCからDPPCへの変換を抑制することが示唆された。 (3) 母獣高血糖下の胎仔肺ではphosphatidylglycerol(PG)低値を認め,従来のヒト,他種動物の報告とよく一致した。 2. CHADの糖尿病合併妊娠におけるRDS発症モデルとしての有用性について (1) CHADは自然発症I型糖尿病チャイニーズハムスターとしては初めて使用された妊娠モデルであり,本モデルを使用することにより,薬物依存性動物における種々の欠点を克服できた。 (2) CHADで母獣高血糖下の胎仔高血糖および胎仔肺においてDPPCならびにPG低値が確認され,CHADモデルとして適当であることを確認した。 (3) 胎仔肺PC分子種組成の検討結果より,適切な実験系の設定により,早産児,未熟児におけるRDS発症モデルとして使用できる可能性も示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-09-01
著者
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