婦人科悪性腫瘍患者の血漿Ribonuclease活性値の治療経過にともなう変動について
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概要
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RNA代謝に関与する酵素のひとつであるRNaseについて婦人科悪性腫瘍患者の血漿中の活性を測定し以下の結果を得た.1)基礎実験で本酵素の反応時間は20分まで直線を示し, 最大反応を示すpHは8.0, 最大吸収波長は260nm., 基質濃度は120ug/0.02mlで充分量であり, 同一検体測定値の変動係数は6.2%(n=15)であつた.2)正常婦人33名の血漿RNase活性の平均値は, 0.24±0.04(mean±SD)ΔOD/0.01ml/20minで(以下単位略)そのmean+2SD(0.32)を越える値を異常値とした.3)婦人科腫瘍患者の治療前における本酵素活性値は良性腫瘍では平均値0.27±0.04, 異常率19例中2例(11%)であつた.子宮頚癌ではI期0.29±0.06, 17例中5例(29.4%), II期0.32±0.06, 21例中8例(38.1%), III期およびIV期0.37±O.14, 28例中15例(53.6%), 同再発癌0.50±0.12, 12例中11例(91.7%)と臨床進行期にともなつて活性値, 異常率とも高くなり, 特にIII, IV期, 再発癌で著明に上昇した.4)卵巣癌, 子宮体癌患者の治療による血漿RNase活性の推移は, 進行例で高値を持続する傾向を示し, 初期の完全摘出症例ではほぼ正常範囲内に復帰した.5)子宮頚癌, 体癌および卵巣癌の進行, 再発例29症例について, 臨床経過良好例と不良例に分け治療前後の活性値を検討すると, 良好15例では異常率は15例中9例(60%)から, 治療により15例中4例(26.6%)へと低率にたつたのに対し, 経過不良14例では1例を除き高値を持続した.6)治療後のfollow up中, 再発による活性値の再上昇がみられた.以上より血漿RNaseは, 婦人科悪性腫瘍患者における生化学的な癌診断と予後追求のひとつの指標として有用であると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-10-01
著者
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