ヒト脱落膜に於けるプロラクチン産生に関する研究
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概要
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ヒト妊娠初期, 中期, 末期の脱落膜, 絨毛膜, 羊膜および胎盤組織を用いてin vitro incubation実験を行い, プロラクチン(PRL)産生, 分泌の有無を偉討した.妊娠初期から妊娠末期まで, 脱落膜のPRL含量は絨毛膜, 羊膜, 胎盤組織に比べ有意に高値であつた.6時間のincubationでは, 脱落膜がmedium中に放出したPRL量は絨毛膜, 羊膜, 胎盤組織よりも有意に多量であり, また, incubation前組織中のPRL含量よりも有意に多量であつた.また, medium中にactinomycin-D(20-200μg/ml), puromycin(200μg/ml), cycloheximide(100-200μg/ml)などの蛋白合成阻害剤を添加により, 12時間incuhationで脱落膜よりmedium中に放出されたPRL量およびincubation後の脱落膜組織中PRL含量はともに有意に抑制された.妊娠各時期の脱落膜のin vitroに於けるPRL分泌量を比較すると, 妊娠中期の脱落膜は妊娠初期または妊娠末期の脱落膜より, 有意に多量であつた.さらに脱落膜組織にradioleucineを加えて12時間incubation実験を行い, 合成されたradioproteinを分画抽出し, chromatographyおよび10%SDS-polyacrylamide gel electrophoresisで展開し, 各分画のradioactivityとPRL含量を測定した.Radioactivityおよびimmunoreactive PRLのpeakはヒト下垂体PRLのpeakと一致し, ヒト脱落膜でPRLが合成, 分泌されることが明らかとなつた.加えて, 脱落膜組織からmessenger RNA(mRNA)を分離抽出し, 家兎赤血球溶血液に加えてtranslation実験を行つた.このtranslation反応液に抗ヒトPRL抗体を加えて沈降させ, immunoprecipitaをgel electrophoresisにより分析し, cell freeの反応系に於てもPRLの合成を認め, 脱落膜のPRL合成能を確実に裏付けることができた.教室の共同研究では, 脱落膜合成PRLと羊水中のそれのmolecular sizeは類似しており, 羊水中PRLは脱落膜由来である可能性が高い.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-10-01
著者
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