子宮頚部微小浸潤癌(Ia期)に関する臨床病理学的研究
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概要
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子宮頚癌Ia期分類基準試案が提示され, 今後は日産婦子宮癌登録委員会においてもこれを採用することになつた.そこでこの基準試案に基づく微小浸潤癌について臨床病理学的に検索し, 浸潤度5mm以内のIb期癌との比較検討を行い, 次のごとき結果が得られた.(1)浸潤度3mm以内の癌は119例であり, そのうちの104例(87.4%)は微小浸潤癌(Ia期), 15例(12.6%)は組織学的に明瞭な浸潤癌(Ib期)に属するものであつた.(2)浸潤形式は, 一般に浸潤が浅い例では初期間質浸潤ないし滴下浸潤が, また深い例では腺からの圧排浸潤が多く認められた.(3)浸潤度3mm以内のIb期癌の浸潤形式は, 網状浸潤工0例, 初期間質侵蝕4例および脈管侵襲1例であり, 浸潤が深くなるほど網状浸潤と脈管侵襲が増加する傾向を認めた.(4)病巣の環状および縦軸の広がりはともにIa期よりもIb期において広い傾向を認め, その病巣分布域も外頚部側へ広がる例が多かつた.(5)Ia期癌の組織型では小細胞一非角化型42.3%および大細胞二非角化型57.7%であり, 角化型は認められなかつた.(6)Ia期癌の32.7%の例に浸潤先端部における癌細胞の分化傾向を認めた.また間質の小円形細胞浸潤は一般に軽度であつた.(7)Ia期癌では最深部頚管腺よりも浅い浸潤を示すものが96.1%と大部分を占めていた.(8)Ia期癌患者の平均年齢は44.1歳・(30〜62歳)であり, 無症状の例カミ60.6%を占めていた.(9)Ia期癌の治療法は広汎全摘術28例, 準広汎全摘術68例, 単純全摘術3例, 円錐切除術1例および円鱗切除術後に放射線療法を追加したもの4例であつた.また骨盤内リンパ節転移は認めなかつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-01-01