尿中トレハラーゼを指標にした妊娠中毒症における尿細管障害について
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概要
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尿細管刷子縁膜に局在している尿中トレハラーゼを指標にして,妊娠中毒症における尿細管障害について検討した.1.妊娠後期における浮腫群(1週間当りの体重増加を指標とした)の尿中トレハラーゼ活性は0.5kg未満群は19.5±2.1μmoIe/hr/g.Cr,0.5kg以上は33.5±4.7μmole/hr/g.Crとなり,0.5kg以上群では有意に高値を示した(p<0.02)。また尿中アルブミン量は0.5kg未満群11.6±1.5mg/1,0.5kg以上群9.7±1.7mg/1となり,健康非妊婦群7.4±1.9mg/1とは有意差はなかった.すなわち軽症浮腫例においては糸球体障害は認めず,尿細管障害が主体であることが推察された.2.純粋型妊娠中毒症の尿中トレハラーゼ活性値は,軽症妊娠中毒症で38.9±5.7μmole/hr/g.Cr,重症妊娠中毒症で179.3±19.6μmole/hr/g.Crとなり,両群とも健康非妊婦および正常妊娠後期に比べ,明らかな有意差を認めた(p<0.01).また,軽症妊娠中毒症と重症妊娠中毒症において重症度と相関して尿中トレハラーゼ活性の上昇が見られた(p<0.001).正常妊娠の場合と同様,純粋型重症妊娠中毒症においても分娩後,尿中トレハラーゼ活性が低下することがわかった.すなわち妊娠後期179.3±19.6μmole/hr/g.Crにくらべ産褥5日目36.8±11.7μmole/hr/g.Cr(p<0.001),産褥30日目25.7±6.2μmole/hr/g.Cr(p<0.001)と有為な低下を示した.3. 混合型妊娠中毒症(重症+軽症)の尿中トレハラーゼ活性は115.8±23.7μmole/hr/g.Crとなり,健康非妊婦(p<0.01),および正常妊娠後期(p<0.02)に比べ有意に上昇した.分娩後,産褥5日目39.9±14.6μmole/hr/g.Crと有意に低下するが(p<0.05),産褥30日目55.7±15.6μmole/hr/g.Crと上昇傾向を示した.以上より妊娠中毒症において尿中トレハラーゼを測定することは,浮腫発症の時点で既に上昇を示したことより,妊娠中毒症の早期診断の指標になり得ると考えられた.妊娠時,産褥5日目と産褥30日目を測定することにより明確に純粋型,混合型妊娠中毒症を区別できることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-04-01
著者
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